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歌舞伎座

歌舞伎座夜景

先日、歌舞伎座さよなら公演を観てきました。
歌舞伎座は、中央区銀座4丁目にあり、伝統芸能 歌舞伎の殿堂として多くの人々に親しまれています。

大正13年に竣工した建物で、空襲により被災しましたが、昭和25年戦災復興工事により改修され、現在に至っています。
鉄筋コンクリートで造られていますが、いくつかの時代様式を上手く取り入れ、伝統的な和風意匠でまとめられています。
特に正面、唐破風の車寄せは迫力がありますね。
改修時の躯体補強等により、内部天井等は低く、内部は手狭な感じがします。
また、歌舞伎座の後ろ側にまわってみますと、劇場としてのスペース不足、設備不足は外観上も充分見て取れます。
演じる側にとっては、少なからず使いにくい部分はあるのだろうなぁと感じます。
しかし、だからといって、壊して建て直せばよいのでしょうか?

明治後半~大正期に活躍した建築家 後藤慶二に劇場について以下のようなことばがあります
「劇場の目的は二つある。第一が演劇を見ること、第二が劇を演ずることであります。
 私は観ることを第一の目的に挙げました。演劇が美なのは劇が美なのではない。
 見る人の気持ちが美なのであります。 演劇を観た時に見ない前の気分と別な気分になれば、
 それで演劇の目的は達せられたので、演ずるのはこの目的を達するための手段に外ならない。
 目的を遂行するために手段を選ぶことは無論肝要でありますから、劇と云ふものに取って之を
 演ずるものは一番重要な仕事に違いないが、其目的を追求すれば観ることに帰結する。
 即ち会社が事務をとる目的の上に立って居るのに反し、劇場は観照の目的の上に立って居るのと
 云ふ所以であります。」 (長谷川堯著 「都市廻廊」より)
 

ですから、この土地、この場所に建てられ、劇場としても建築としても、人々の記憶に深く留まっているような
歌舞伎座を一企業の都合で壊すことは、歌舞伎という演劇界にとっても、また街の記憶という観点からも
許されないことではなかったかと考えます。

歌舞伎座建替えの計画が発表されると、日本建築学会等から保存要望が出され、保存要望運動も起きましたが、
すでに解体が事業決定されました。
そして、ついに歌舞伎座最後の日が来てしまいました。


詳しくは、建築学会の要望書(歌舞伎座の建築史的価値解説付き)等をご覧ください。
 建築学会、歌舞伎座の保存に関する要望書はこちら
 要望書に対する、株式会社歌舞伎座の回答はこちら

また、建替え計画案は、発表されております。
 発表された、歌舞伎座建替え計画案はこちら

[SHIN建築事務所]

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